2008/07/14
■[SBM]ソーシャルブックマーク研究会(SBM研究会)で個人的に興味深かったテーマ2題
7月13日(土)に、東京工業大学大岡山キャンパスの一室にて、ソーシャルブックマーク研究会(SBM研究会)が開催されました。P2P勉強会等でお馴染みのTomoさんが主催する、ソーシャルブックマーク(Social Bookmark、SBM)をテーマにした新しい勉強会シリーズです。
当日のプログラムおよびプレゼン資料は以下のURLから閲覧できます。
個人的には、ソーシャルブックマークが話題になったのって2005年頃で、そこから先は一部で細々と使われてるだけという印象でした。だからあまり人は集まらないだろうと思ってたんですが……。
しかし「SBMに関する研究会」とターゲットを絞った企画設定が、熱心なネットユーザを引きつけたのか、当日は80名近くが集まる盛況なイベントになりました。実際、ホントに熱心なネットユーザが多かったらしく、Web上には既に熱の入った感想がたくさん上がってます。SBM研究会らしく、感想は「sbm研究会」タグから辿れますのでそちらをどうぞ*1。
- はてなブックマーク - タグ sbm研究会
- livedoor クリップ - タグ「sbm研究会」の新着ページ
- 「SBM研究会」を含むエントリー - Buzzurl [バザール] / ソーシャルブックマーク
- Tag Marks : SBM研究会 - コモンズ・マーカー
以下は、個人的に特に興味深かったテーマ2題についてのメモと感想です。
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■ Webページに「赤入れ」する手段としてのソーシャルブックマーク
コモンズ・マーカー: Webにマークを付け、みんなで共有
http://commonsmarker.com/
コモンズ・メディア代表取締役の星さんによる講演「Webの世界に気づきを集積するコモンズ・マーカー」では、7月初頭に発表されたばかりの新サービス「コモンズ・マーカー」が紹介されました。
コモンズ・マーカーについては最近ニュースサイトにいくつか記事が出ていた(↓)ので、ご覧になった方も居るかと思います。
記事を読んでない方のために簡単に説明すると、このコモンズ・マーカーは、ページの中で気になった部分に蛍光ペンで色を塗って、コメントを書き込むようなサービスです。「Wordのコメント機能のWeb版」と言った方が分かりやすいかもしれません。
コモンズ・マーカーがこういうインターフェイスとして採用したきっかけは、「Webに朱入れ(赤入れ)する手段が無かったから」とのこと。
星さんは元日経BP者の記者なのですが、同業者に色々ヒアリングしていたところ、現場では記事を検閲するときに「ニュースサイトであろうと」一度紙に印刷してから赤を入れているそうです。確かに、紙に印刷して渡してしまった方が早いことって、よくありますよね……。また、吹き出しや付箋といった良くあるメタファを使わなかったのは、100個を越えるような大量コメントの共有に弱いため。評価尺度は「編集・共有に使えること」だったそうです。
他に星さんがアピールしていた利点は、「反応したい場所にそのまま書き込めるので、コメント欄より対話に向いている」点や、「面白いが難解な文書の一部に要約を付けるような形で、閲覧者が一緒にコンテンツを改善できる」点など。講演の最後は「マーク付け自体がWeb Publishingに、ひいてはメディアになる」として締めくくられました。
恥ずかしながら、最初ニュースサイトで見たときには「それなんてニコニコブックマーク?」と思ってたんですが、とんでもない勘違いでしたね(すみません……)。
星さんの仰っていた開発のきっかけから考えても、将来的にはWikiのような、コンテンツの共同編集手段と連携できると有望そうな気がしました。今の実装では、マークした部分の文書が編集されると、そのマークは「該当箇所なし」として扱われてしまうそうですが、この点についてはバージョン管理機能のあるWikiと連携すれば解決できると思います。または緊密に連携しなくても、例えば、Wikiの側で現在表示中のページのバージョンと、そのバージョンに対応したパーマリンクのURLをページに埋め込むようにすれば、特定のバージョンにマークを付けることも可能ではないかと。
ただ、名刺交換をお願いしたときに直接お聞きしたところ、そういう方向は将来の目標かもしれないけど今は特に考えてないそうです。しょんぼり。開発は少人数でやってるそうで、あちこち手を出すのはまだ大変そうですが、今後の発展に期待します。
おまけ:家に帰ってきてから取ってみたコモンズ・マーカーのアカウント
http://commonsmarker.com/user/muziyoshiz
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■ イントラネット内に閉じた社内ソーシャルブックマーク
もう1つ、個人的にとても面白かった話題は、パネルディスカッション中に紹介された社内ソーシャルブックマークの事例です。特に、みずほ情報総研の吉川さんから紹介された社内事例は、ソーシャルブックマーク(ソーシャルニュース)を起点にかなり密なコミュニケーションをしている事例として、とても興味深かったのでメモしておきます。
みずほ情報総研は銀行系SEが主の会社ですが、コンサルティング担当も少数居て、吉川さんはそのコンサル部隊の中でナレッジマネジメント関係の業務をされています。
みずほ情報総研では、2006年11月からマイネット・ジャパンに接触・企画を開始して、社内の一部で試行を開始(マイネット・ジャパンはユーザー参加型ニュースサイトnewsingの運営元)。その後2007年4月に、みずほ情報総研の監修のもと、社内ソーシャルニュースパッケージ「イントラnewsing」がリリースされ、2007年6月からは吉川さんの部署の全員にアカウントが配られたそうです。今回の講演は、社内展開からちょうど1年後ということになります。
参考:【プレスリリース】国内初の社内ソーシャルニュースパッケージ『イントラnewsing』をリリース (マイネット・ジャパン Info Blog)
http://blog.mynet.co.jp/info/2007/04/newsing_8.html
社内展開のユーザは、コンサルタント業務担当者40名程度。コンサルタントは、仕事柄、自分の専門分野のニュースは漏れなく見ていなければいけないため、イントラNewsingはかなり役立っているそうです。2〜3割のユーザはログインすらしてくれないらしいのですが、逆に言うと7〜8割のユーザは多かれ少なかれ使ってるわけで、かなりの利用率と言えるでしょう。
社内展開でのブックマークの主な閲覧パターンは、主に2つ。
1つは、特定の人(一緒に仕事をしている人など)のクリップを全部読むというパターン。これにより会議の時に「あの記事見た?見てない?最近は……」と意識合わせする手間が省けて、会議がスムーズになったという意見があるそうです。
そしてもう1つは、イントラNewsingの配信するメルマガを通して記事を読むというパターン。イントラNewsingは、前日にクリップされた全ての記事をメルマガで配信する「メルマガ機能」を搭載しているそうです。
そしてここからが面白い話なのですが、イントラNewsingは前日にクリップされた「全ての記事」をメルマガで配信するため、1日に登録された記事の件数があまり多くなると、メルマガが読み切れなくなってしまいます。そこで、1日に登録された件数が多い日は、ユーザが登録を遠慮するようになってしまい、結局1日に流れる件数は一定以下に落ち着いているそうです。つまり、イントラNewsingは、メルマガを共同編集する手段のような扱いになっている?わけで、これは興味深い現象だと思います。
その他、イントラNewsingの機能としては、頑張ってUNC表記(\\servername\path\filename.txtみたいなの)に対応して社内文書もブックマークできるようにしたものの、これは社内展開ではあまり使われてないそうです。個人的にはあったらすごく便利な機能に見えるんですが……専門分野のニュースを見るツール、という扱いになってることを考えれば、これはまあもっともなのかも?
また、イントラNewsingにはコメント機能が付いており、1つのニュースをきっかけに議論できるように何回も書き込み可能にしたそうです。ところで講演後に直接お聞きしたところ、みずほ情報総研の社内にもイントラブログがあるものの、そちらはあまり使われていないそうです。気になった記事をブックマークしたり、そこにコメントを付けるくらいの方が気楽だからというのが吉川さんの推測で、僕自身の経験からもこれは納得できます。社内限定のブログって、あんまり書くことないんですよね*2。
最後に、利用者に対して過去2回行ったアンケートによると、利用者の感じているメリットは「新しいことができるようになった点」で、「情報収集の省力化」のようなポイントはかなり低いようです。コンサルタントとして売り込むときは、紙で配っているものを電子化して省力化するという売り方をしているそうですが、そこにズレを感じているようでした。
また、利用者に対するアンケートで、「イントラNewsingは便利か?」という質問に対しては「便利である」という回答のポイントが高かったものの、「全社に展開するべきか?」という質問に対しては「展開すべきでない」という回答のポイントが高かったそうです。この結果からも分かるように、みずほ情報総研の事例では、ソーシャルブックマークが少人数での密なコミュニケーションのツールとして使われているようです。
恐らくこれはソーシャルブックマークに限った話ではないと思うのですが、大量のユーザを抱えながらも、情報の公開/閲覧範囲をうまく制限する(あるいは制限してるように見せかける)仕組みには需要があるなあとつくづく思います。個人的には公私ともにこのあたりをずっと考え続けていたので、今回の講演はとても刺激になりました。
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■ その他色々
上記2つのトピック以外も、今回のSBM研究会では色々面白い話が聞けました。特に、今年の春から学びing(まなびんぐ)株式会社の企画営業部課長に就任された横田さん(a.k.a. ヨコタン)の講演は、その内容もさることながら、聴衆を飽きさせないプレゼン技術に感心しました。数年前はあんなにアレゲだったのに。。僕ももうちょっと頑張らないとなあ。
また、ここでは紹介しませんでしたが、他の方の講演もそれぞれ特色があり面白かったです。そちらに興味のある方は、上で紹介した各種ソーシャルブックマークから感想を辿ってみてください。
主催者のTomoさん、今回の会場を手配してくださったローカルコーディネータの宮田さんと佐々木さん、そして講演者の皆様ありがとうございました。
*1 Tomoさんが開会・閉会時に、「ブログに感想を書いて『SBM研究会』とタグを付けるようお願いしていた効果がてきめんで、関連記事を非常に拾いやすくなってます。まあ、現状ではそうやって工夫しないと類似記事をうまく集められないので、宮田さんらの発表したような研究は重要、ということかも。
*2 LinearNoteはこの問題に対する一つの解だと思ってるんですが、自分でもUIがいまいち気に入ってないので別の仕様を検討中です……。
予告していた通り、先週の土曜日にはSBM(ソーシャルブックマーク)研究会へパネ
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