無印吉澤(※新エントリはhatenablogに掲載中)

吉澤です。このサイトではIPv6やP2Pなどの通信技術から、SNSやナレッジマネジメントなどの理論まで、広い意味での「ネットワーク」に関する話題を扱っていたのですが、はてなブログに引っ越しました
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最新 追記

2006/07/09

[P2P][P2P勉強会]2006年夏のP2P関係イベント(勝手な予想付き)

今年の夏は、Tomoさん主催のP2P関係イベントが2つ開催されます。

Tomoさんのサイト(Tomo's Hotline)で告知されたのは結構前なのですが、僕がサイトの更新をさぼっていたので随分ご紹介が遅れてしまいました……ので、もう既に知ってる人は多いかも。でも、せっかくなので、一応こちらでもご紹介しておきます(他に日記のネタもないことですし)。

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第2回DHT勉強会参加募集開始のお知らせ(Tomo’s HotLine)
http://toremoro.tea-nifty.com/tomos_hotline/2006/07/p2pdht2dht_3ef6.html

DHT勉強会は、P2P技術の一種である分散ハッシュテーブル(Distributed Hash Table)に焦点を当てた、技術的な色合いの強いイベントです。特に、今回は2回目の勉強会ということもあって、「DHTを使うとデータを分散配置できる」という基本的な話から一歩進んだ講演が予定されています。

以下は、Tomo's Hotlineの告知文からの引用です。

◇日時:9/18(月、祝)
10:00〜15:00(時間は調整中)

◇場所:金沢工業大学東京虎ノ門キャンパス1F (93.101)
アクセス方法:
http://www.kanazawa-it.ac.jp/tokyo/map.htm
◇定員:60人
◇参加費:1000円程度(調整中)
⇒講師のお足代等に充当します。

◇講師陣のお知らせ(7/1現在)

-首藤 一幸 氏:ウタゴエ(株) 取締役 最高技術責任者
「オーバレイ構築ツールキット Overlay Weaver(仮)」
⇒ご存知Overlay Weaverの開発者の方です。

-加藤 大志 氏:NEC
「プロトコルとして見たDHTの設計と実装(仮)」
⇒P2P-Webの開発者の方です。

-池嶋 俊 氏:筑波大
「AsagumoWebの開発・実装について(仮)」
⇒SoftEther開発者、「入門Skypeの仕組み」著者です。

-吉田 幹 氏:(株)BBR 取締役CTO(7/1追記)
「P2Pエージェントプラットフォーム PIAX の理念と実装」
⇒ 地理的range searchのための LL-Net と、汎用的オーバレイである Skip Graph の2つの技術について紹介します

-西谷 智広:Tomo's Hotline
「DHTにおけるセキュリティ対策を考察する〜DHTプラットフォームの信頼性向上にむけて(仮)」

*講演者、ミニプレゼン講演者を引き続き募集中です。
*懇親会等も予定しています。参加者を別途募集します。
*スタッフ希望の方は別途ご連絡下さい。スタッフ用の特典をご用意しています。

参加募集は以下のページ(Mixi)からお願い致します。
http://mixi.jp/view_event.pl?id=8168327

上記の告知だけだと各講演の内容がよく分かりませんので、各講演について僕の予想を勝手に書いてみます。もっともらしく書いていますが、あくまで個人的な予想(&期待)なので、全然違う内容でも怒らないで下さいね……。

■ 「オーバレイ構築ツールキット Overlay Weaver(仮)」(首藤 一幸 氏)

首藤さんの講演タイトルにある「Overlay Weaver」とは、首藤さんが開発された、オーバレイネットワーク(≒P2Pネットワーク)を構築するためのツールキットです。このツールキットは、DHTの詳細に関わるルーティングアルゴリズム等を差し替え可能な拡張性を備えているだけではなく、自身が構築したオーバレイネットワークを大規模ストレージやマルチキャストに使うための上位APIまで備えています。

DHTのことをある程度ご存じの方でも、やはり「DHTといえば大規模ストレージ」というイメージが強いと思うのですが、この講演は、DHTを扱うAPIの設計を通して「どこからどこまでがDHTの範囲なのか」を考え直させてくれるのではないでしょうか*1

■ 「プロトコルとして見たDHTの設計と実装(仮)」(加藤 大志 氏)

次の加藤さんは、NECでP2PWebの開発をされている方です。P2PWebについてはこれまで詳細な情報が発表されていないのですが、「DHTを使って、セキュリティを強化したP2Pネットワークを構築する技術」であるらしく、発表時には非常に注目を集めていました*2

僕も一時期このP2PWebに興味があって、NECの方が執筆した論文をチェックしてみたりしていたのですが、その中にこういうものがありました。

Latency Model of a Distributed Hash Table with Big Routing Table
http://citeseer.ist.psu.edu/722291.html

この論文の内容をすごーく乱暴に言うと「ノードが安定している(up/downが頻繁でない)場合は、ルーティングテーブルを大きくした方が待ち時間が短くなってイイ」という論文です(いや、タイトルしか読んでないわけでは……)。P2PWebは専用のサーバでP2Pネットワークを構成するようなので、少なからずこういう考え方が入っていると予想しているのですけど、どうなんでしょうか? ともかく、普通のPCを使うようなDHTとはちょっと違った話が聞けそうで楽しみです。

■ 「AsagumoWebの開発・実装について(仮)」(池嶋 俊 氏)

池嶋さんの講演は、新月RinGOchのライバルである、P2P掲示板のAsagumoWebの開発・実装のご紹介です。……以前にもっと詳しい話をお聞きしたような気もするんですが、僕はよく理解できていないのでどうしてもこんな説明になってしまいます。すみません。

AsagumoWebと、それ以前から開発されていたP2P掲示板(+α)との違いは、その名の通り、Webとの親和性の高さです(と個人的には想像してます)。そのあたりの技術的な詳細についてお話ししてもらえるのではないでしょうか。

■ 「P2Pエージェントプラットフォーム PIAX の理念と実装」(吉田 幹 氏)

PIAXとは、ウェブサイト(http://www.piax.org/)によると「広域のネットワークから特定の位置に関係する情報を効率良く探索する」ためのプラットフォーム・ライブラリのようです。DHTを位置情報の管理に利用する研究としては、IntelのPlace LabがOpenDHTを利用している例がありますが、PIAXの構成するオーバレイネットワークはもう少し位置情報に特化しているように見受けられます。

まだソースコードは公開されていませんが、紹介文を見る限りでは実用上十分な機能と安定性を持っているようなので、経験に裏付けられた中身の濃い講演が期待できます。

■ 「DHTにおけるセキュリティ対策を考察する〜DHTプラットフォームの信頼性向上にむけて(仮)」(西谷 智広 氏)

DHTネットワークでセキュリティを確保する方法については、これまでにも色々研究がなされているようですが、日本語でのまとまった情報はあまり無いのが現状です。まあ、DHTがまだそこまで実用的な段階とは見なされていないとか、実用化するときには限られたノードだけでP2Pネットワークを構成してしまうのでセキュリティが問題にならないとか、色々事情はあると思うんですけど……。

ともかく、こういう講演でDHTのセキュリティに関する情報をまとめてもらえると非常に勉強になるので、個人的にはとても期待してます。

今回の勉強会は、過去のP2P勉強会やSkype Conferenceと比較して定員が少なめ(60名)なので、もし上の予想で興味を持ってもらえましたら、

参加募集は以下のページ(Mixi)からお願い致します。
http://mixi.jp/view_event.pl?id=8168327

から、是非お早めに参加申し込みをお願いします。mixiに入っていない方でも、Tomoさんに直接メールを送ってもらえれば参加可能だと思いますので、そちらへどうぞ(過去のイベントではそうだったので、多分大丈夫じゃないかなあ……)。

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P2Pコミュニティ納涼会のご案内(Tomo’s HotLine)
http://toremoro.tea-nifty.com/tomos_hotline/2006/06/p2pp2p_a353.html

で、もう一つのイベントのこちらは、普通の飲み会です。ご興味がありましたらこちらもどうぞ。

□日時:2006年8月25日(金)19:00で調整中
□場所:新宿で調整中
□会費:3000円〜4000円を検討中(飲み放題)
□その他:立食パーティを予定

*要望等ありましたら、コメントをお願い致します。

→詳細情報、参加受付は下記のページをご覧下さい。
http://mixi.jp/view_event.pl?id=7924684&comment_count=0&comm_id=6936

*1 参考:以前の講演資料はこちら→情報共有(P2P)研究会に参加してきました

*2 参考:NECとP2P続・NECとP2P


2006/07/23

[書評][ネット文化]インターネットの法と慣習

インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門(白田 秀彰) インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門(白田 秀彰)

インターネット文化/技術に造詣の深い法学者である、白田先生の新刊です。書き下ろしではなく、今年の3月までHotwired Japanで連載されていた「インターネットの法と慣習」というコラムを再編集した本とのこと*1

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本書で書かれていることは、僕なりの理解でおおざっぱにまとめると、

「インターネットによって新たに出来るようになったことが、現実世界の法で阻害されつつある。このままでいいの?」

という危機感と、この現状をより良くするための著者による持論です。

正直、僕みたいな理系人間が法律に関する話を聞く機会となると、個別の事例に関する弁護士の見解(Winny裁判の壇弁護士とか)くらいしかなかったので、法学者による法の歴史を踏まえた意見は弁護士のそれとまた違う雰囲気があって面白かったです(まぁ、これは白田先生の特異なキャラクタから来てる面白さかもしれませんけど……)。

例えば本書では、知的財産権制度の話をするにしても、Winny裁判の話を直接的に持ち出したりはせずに、

知的財産権と土地所有権が似ているという話
→ 封建時代に土地所有権が成り立っていった歴史の話
→ 知的財産権を土地所有権に例えるとこうなる、という例え話
→ 知的財産権の問題点(知的財産を仲立ちとした支配)の指摘

という感じで、随所で過去の歴史を背景としており、そこが(ある種突拍子もない)著者の持論に説得力を持たせています。

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しかしこの本、文体が軽くて、内容も面白いのでサッと読めるんですが、その中で書かれている問題について考え出すと急に難しくなってきます。本書の扱っている問題は、結局のところその大半が社会に関する問題なので。

インターネット上の書評を見ていたら、本書を「ライト・アカデミズム」と評している人*2がいましたが、うまく言い得てるかも……。インターネットの未来について考えたい人には、個人的には「ウェブ進化論」よりずっとお薦めです。

*1 ちなみに、収録されてるのは全27回のうちの一部だけです。個人的には、現実2.0(Hotwired Japan連載の最終回)の熱い文章も載せてほしかったなぁ……。

*2 白田秀彰「インターネットの法と慣習」(ソフトバンク新書)(tairadaのひとりごとver2.0)


2006/07/24

[意味情報]発言するときは、その発言の意味情報を手入力させたらどうだろう?(Inter-Human Communication Protocolへの道)

昨日の日記で書評を書いた「インターネットの法と慣習」関連で、ネタを一つ。

この本には著者である白田先生の変わった持論が数多く展開されていますが、その中の1つに「Inter-Human Communication Protocol」というプロトコルの提案があります。Hotwired Japan連載の第6回3ページ目に同様の記述があるので、その文章を以下に引用します(書籍版では137〜138ページ)。

法は何らかの社会的目的を掲げるものであるがゆえに、多様な価値観が同居するネットワークにおいて法が成長しにくい状況にある。でも、秩序維持の問題は、法の問題であるよりも先に、見知らぬ者同士が円滑に交流するための典礼の問題なのかもしれない。典礼であるならば、価値観の問題を排除したルール作りができるかもしれない。そしてもし、典礼が内容を問わなくても良いのだとしても、良い実装と悪い実装くらいは客観的に評価できるかもしれない。

もうすでにあるのかも知れないけど、ネットワークでの人々の交流を分析したうえで、Inter-Human Communication Protocol みたいなものの草案を作成し始めてもいいんじゃないだろうか。プロトコルに従わない人を排除するのは、権利の否定や人格の否定ではなくて、単に「403 Forbidden」というメッセージが返ってきただけのものとして処理することはできないだろうか。プロトコルに従わない人のメッセージを存在しないものとして扱う技術的・心理的実装はできないだろうか[*2]。

で、白田先生自身はこれ以上の具体的な提案はしていなくて、僕も最初これを読んだ時点では何がなんだかさっぱり分からないという状態でした。ただ、他の人の書評をいろいろ読んでいるとIHCPについて具体的に考えている人も居て、特に興味深かったのが以下のお二人の意見。

IHCPC(Ringo's Weblog)
http://www.ce-lab.net/ringo/archives/2006/07/22/index.html#000338

権威と監視([鏡] しっぽのさきっちょ 2006年07月 -- Spiegel's Trunk)
http://www.baldanders.info/spiegel/log/200607.html#d22_t2

Ringoさんの意見の方は、

「コミュニケーション能力の高い人格者」が統治する政治から、 技術によるアーキテクチャが統治する政治へ移行するはずという、 白田氏の議論のベースとなっている考え方

を押し進めたものとしてIHCPを捉えた上で、このようなアーキテクチャはまず企業から適用されるだろう、という予想の元でIHCP(Inter-Human Communication Protocol in Corporation)というアイディアを披露しています。詳しくは元記事の方を見てもらうとして、個人的には「軍隊」に似たやり方のような印象を受けました(ここで言う「軍隊」にネガティブな意味は無いです)。軍隊の実態は全然知らないので、あくまで印象ですけどね。

一方、Spiegelさんの意見の方では、

これは既にさまざまな形で始まっているような気がする。例えば spam 等のノイズを排除する手段としてフィルタリングやレーティングを使うのが主流になりつつある。検索サービスもユーザから見ればフィルタリングとして機能する。見方を変えるなら,ユーザはフィルタリングやレーティングによって排除されないように振舞う。

として、白田先生の「プロトコルに従わない人を排除するのは、権利の否定や人格の否定ではなくて」というアイディアと、既存のスパムフィルタの機械的な排除の共通点を指摘しています。まぁ、現時点で「スパムフィルタでメールが見れない」ときは受け取った側が悪いことになると思うので(多分そうですよね?)、現在の状況とは少し違うと思いますけど。ただ、将来そうなる可能性は少しありそうな気もします。

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このような意見を参考にして自分でもいろいろ考えてみて、僕も1つアイディアが浮かびました。で、ここでようやっと日記のタイトルに戻るのですが、コンピュータネットワーク上で発言するときは、その発言の意味情報を手入力させたらどうでしょう?

ここで、意味情報として僕が考えているのは、

  • その発言は「要求(Request)」か「応答(Response)」か

    • 「要求」なら、その要求内容は何か(テーマ)
    • 「応答」なら、

      • どの「要求」に対する「応答」か(発言間のリンク情報)
      • その「要求」に賛成か反対か
      • その「要求」に好感を持っているか持っていないか
      • もしくは単に見た/読んだことの確認(ACK)か

という情報です。そして、これがこのアイディアのキモなのですが、発言に付けられたの意味情報と、この意味情報が付けられた発言の中身の意味が違っていたら、「Semantic/Contents Mismatch Error」扱いにしてその発言は黙って破棄されるようにします。

1つ例を挙げると、例えば僕の前回の日記は「インターネットの法と慣習」という本に対する応答ですが、これに意味情報を付けるとしたら「応答」と「好感を持っている」になるでしょう。一方、誰かが「この本を書いた人はある意味天才です!」という文章を書いて、それに「応答」かつ「好感を持っている」という意味情報を付けたら、これは自然とエラーで破棄されます。つまり、皮肉や嫌味といった、文体(Semantic)とその内容(Contents)がマッチしていない文章は自然と淘汰されるということです(意味情報が正しければ、その意味情報を見て、閲覧者は中身を読むべきか判断するでしょう)。

具体的にどう実現するかは、スパムフィルタのような確立統計的な手法でも良いでしょうし、その発言の閲覧者による投票に頼っても良いでしょう。ここは、心理的な影響を避けるためにも、出来るだけ機械的な処理にする(または見せかける)べきでしょうね。

これだけで、事務的なコミュニケーションはだいぶ円滑になるんじゃないでしょうか? まぁ、非言語的なコミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)を無理矢理機械に置き換えようとしてるだけかもしれませんけど……。

ただ、ノンバーバルコミュニケーションとは違って、このような情報を大量に集めることが出来れば、発言間のリンク関係を分析できるようになります。そこから更に上位のプロトコル(というかフローのパターン?)が見えてくるかもしれません。例えば、分析結果から

  • 部長から承認を得る時にはRequest-Responseの2メッセージだけ
  • だけど、課長から承認を得る時にはRequest-Response-ACKの3 way handshakeになってる

という差異があることが分かったら、それを埋めるためにその組織内でのパターンをどちらかに統一するという形で「組織内で円滑にコミュニケーションを行うためのルール作り」が出来るかもしれません。

うーん、このアイディア、もうちょっと煮詰めたら何か面白くなりそうな気がするんですけど。誰か真剣に考えてみません?

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参考サイト:

いずれもP2P today ダブルスラッシュより。まだ増えそうなので、最新版はそちらをチェックしてみてください。

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(2006/07/26追記)
「インターネットの法と慣習」まとめサイトがあったので(すみません忘れてました)、こちらも紹介しておきます。更新お疲れ様です。

白田秀彰著『インターネットの法と慣習』ベストセラーへの道(随時更新)
http://d.hatena.ne.jp/inflorescencia/99990101


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