無印吉澤(※新エントリはhatenablogに掲載中)

吉澤です。このサイトではIPv6やP2Pなどの通信技術から、SNSやナレッジマネジメントなどの理論まで、広い意味での「ネットワーク」に関する話題を扱っていたのですが、はてなブログに引っ越しました
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2009/04/05

[書評]2009年1月〜3月に読んだ本

元旦の日記で「今年は週一冊は本を読む」と宣言してしまってから早3ヶ月。日記のリハビリがてら、今日はちょっと現状を振り返ってみようと思います。

先に結果から言うと、この3ヶ月で読んだ本は8冊でした(雑誌とか、一部だけ読んだ技術書は除いてます)。今年に入ってから、少なく見ても12週間は経過しているので4冊ビハインドですね……。1月中は割と順調なペースで読んでいたのですが、年度末になって仕事量と花粉症が酷くなってすっかりペースが落ちてしまいました。ダメダメですね。

以下は、1〜3月に読んだ本についてのちょっとしたコメントです。

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Googleを支える技術  ̄巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)(西田 圭介) Googleを支える技術  ̄巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)(西田 圭介)

世間での評判通りの面白い本でした。Googleに関する技術的なキーワードを一通り理解した気になれる、非常にお得な本です。

個人的には、第5章の「Googleの運用コスト」のところが特に興味深く読めました。発電所の最大発電量を超えないようにデータセンター全体でパワーキャッピングをする(処理性能を犠牲にして負荷を落とす)、なんて話が出てくる辺りは、あまりのスケールの大きさに頭がクラクラしますね……。データセンターの消費電力を削減するために、Googleではソフトウェアからハードウェアまで様々な工夫を凝らしているようで、こういう話はブログなどのメディアにはあまり出て来ないので勉強になりました。

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Google誕生 ―ガレージで生まれたサーチ・モンスター(デビッド ヴァイス/マーク マルシード) Google誕生 ―ガレージで生まれたサーチ・モンスター(デビッド ヴァイス/マーク マルシード)

「Googleを支える技術」からの流れで、積ん読になっていたGoogleの歴史本を読みました。2005年くらいまでのGoogleの歴史が細かく書かれている本で、歴史上の細かいエピソード好きの人には面白いかも。「20%タイムの考え方は学問の世界から持ち込んだもの」という話があり、そのあたりは僕は初耳でした。

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クルマの渋滞 アリの行列 -渋滞学が教える「混雑」の真相- (知りたい!サイエンス)(西成 活裕) クルマの渋滞 アリの行列 -渋滞学が教える「混雑」の真相- (知りたい!サイエンス)(西成 活裕)

「渋滞学」の人の本。著者は、渋滞学とは新しい概念であるというようなことを主張しているのですが、個人的には複雑ネットワークの研究との違いがよく分かりませんでした。「創発」と何が違うのかなあと。新ネットワーク思考であるとか、スモールワールド・ネットワークに出てくる話の方が、渋滞学よりも応用可能性がありそうな気がしました。

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究極の会議(鈴木 健) 究極の会議(鈴木 健)

これも積ん読本。会議中にPCの画面をスクリーンに映し出して、そのPC上で議事録を編集し、ToDoを含む全ての合意を取ってしまう「議事録ドリブンの会議」のやり方が書かれた本です。

しかし、議事録の取り方に関わらず、あらゆる会議に適用すべきルールがまとめられているので、普通のホワイトボードを使って会議をしている人にも参考になる本かと思います。例えば、参加者へ事前にアジェンダを配布する、発表者には必ず前準備をしっかりさせる、各テーマにかける時間を会議開始時に決めて時間管理をする、会議中にToDoとその期限を明確に決める、などなど。何をやるのかも、いつまでかかるかも分からない会議に出るのは辛いですからね……この辺は自分で会議を仕切るときには気をつけたいものです。

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高校生のための論理思考トレーニング (ちくま新書)(横山 雅彦) 高校生のための論理思考トレーニング (ちくま新書)(横山 雅彦)

タイトルに「高校生のための」と入ってますが、すべての社会人にオススメしたい本です。今まで僕も「ロジカルシンキング」に関するビジネス書を読んだことがありますが、本書はそれらの本よりもずっと明確に「論理的な思考とは何か?」ということを説明してくれています。

この本によると、論理的な思考とは「米国人に特有の心の習慣」であり、英語では「論証責任を求められる表現」と「求められない表現」を文法的に区別できる(日本語にはそのための文法がない)とのこと。また、論証責任を果たすための発言ルールについて、いくつかの例題を用いて詳しく解説されています。ときどき「日本語で論理的なことを書くのは無理」という発言を耳にすることがありますが、「でもそれってどういうこと?」と感じる方には本書がオススメです。

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Eric Sink on the Business of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方(Eric Sink/エリック・シンク) Eric Sink on the Business of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方(Eric Sink/エリック・シンク)

小規模なソフトウェアベンダ(ISV、Independent Software Vendor)を運営する著者による、ギークのためのビジネス書です。この3ヶ月で読んだ本の中では、一番面白く読めました。

全体的に面白い本なのですが、個人的には第3部の「マーケティング」が特に面白かったです。本書では、競合のいない市場よりも適切な競合のいる市場を選べ(競合のいない市場は、単に需要のない市場である可能性が高い)ということが形を変えて繰り返し主張されていて、その主張が特に分かりやすく書かれているのが「ポジショニング」に関して書かれた第15章です。

この章では、製品のポジショニングとは、以下の3つの空白を埋めることであると説明されています。

[ A (限定詞) ] のための最も [ B (最上級) ] な [ C (ラベル, 製品ジャンル) ]

例えば、Windowsは「デスクトップPCのための最もポピュラーなオペレーティングシステム」であるし、Macは「グラフィックデザイナーのための最もポピュラーなオペレーティングシステム」であると*1。いま自分がやっていることでA〜Cを埋めるとしたら、何を埋めたら良いんだろう?と考えると、これは結構面白い命題なのではないでしょうか。

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猿はマンキお金はマニ―日本人のための英語発音ルール(ピーター バラカン) 猿はマンキお金はマニ―日本人のための英語発音ルール(ピーター バラカン)

CBSドキュメントで司会のピーター・バラカン氏が宣伝してるのを見て買った本です。さっと読める程度の厚さですが、中身は予想以上に面白い本でした。

この本は、英語の発音がおかしな日本人に向けて、英語の発音ルールを知ってもらうために書かれた本です。英語の発音についての本と言うと、普通は発音記号がいろいろ書いてありそうですが……本書ではかなり簡略化された独自の発音記号を使って、英語の発音ルールのエッセンスを軽快に説明してくれます。

例えば、本書によると「強調されない母音はいい加減な発音になりやすい」とのことで、いい加減な発音になりやすい部分は「*」という発音記号で記載されています。その上で、「Oxfordのようにfordで終わる地名や人名はすべてフッド[f*d]と発音します」なんて話が書かれているわけです。全体的にこういうざっくりとした説明が続くのですが、そのルールに従って実際に英語を発音してみると、なんかそれっぽく聞こえるのが不思議です。

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Amazon EC2/S3クラウド入門(学びing) Amazon EC2/S3クラウド入門(学びing)

けんてーごっこというコミュニティサイトを実際に運用している会社の観点から、Amazon EC2/S3のメリットと、クラウドコンピューティングへの今後の期待について書かれた本です。Amazon EC2について大体の話は知っていたのですが、既存のホスティングサービスからAmazon EC2/S3へとサービスを徐々に移行させていく経緯や、現場でどういう判断が行われたか、といった話は面白く読むことが出来ました。

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今はEric Sink on the Business of Softwareでオススメされていたポジショニング戦略と、長い間積ん読状態になっていた[24時間365日] サーバ/インフラを支える技術を平行して読んでます。5月はゴールデンウィークもあるので、4〜6月には遅れを取り返したいところですが、さてどうなることやら……。

*1 説明を簡単にするために、ここでは僕が勝手に一部表現をアレンジしています。今となってはMacOSは開発者用に最適なOSとか突っ込まれそうな気がしますが、別にそういう観点が抜けているわけではありませんので。

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