無印吉澤(※新エントリはhatenablogに掲載中)

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2005/11/24

[Teredo][IPv6][NAT]KAMEとTeredoと「どこでもIPv6」

KAMEプロジェクトの完成宣言 − IPv6研究開発:運用と応用に軸を置いた新段階へ(プレスリリース)
http://www.wide.ad.jp/news/press/20051107-KAME-j.html

「KAMEプロジェクト」と言えば、WIDEの人たちが集まってBSD系OS向けIPv6スタックを開発するという内容の、極一部では非常に有名なプロジェクトです。しかし、最近はIPv6の基本的な仕様と実装の安定化に伴い、IPv6スタックそのものを大勢で作り込むこともなくなり、今回のプロジェクト「完成」に至ったようです。

正確に言うとプロジェクトの完了は2006年の3月になるということですが、部外者ながら、関係者の皆さまにはお疲れ様でしたと言いたいです。不完全な仕様&実装を作り込んでいく仕事は、きっと楽しかったでしょうね……。部外者の勝手な想像ですけど、うらやましい限りです。

で、そのKAMEプロジェクトの歴史や内部事情をまとめた面白い記事が、IPv6styleで公開されていました。

IPv6style:KAME プロジェクトの歴史と成果
http://www.ipv6style.jp/jp/special/kame/20051121/index.shtml

個人的は、2ページ目の特許問題の話がこの中で一番面白かったです。一部引用。

KAME プロジェクトでは、 特許問題のないプロトコルはもちろんのこと、特許が取得されていても契約なしに無料で利用できるのであれば実装してきた。しかしながら、契約が必要であったり、使用料を払わなければならない場合は、実装しない方針をとっていた。

理由は次の通り。まず、KAME プロジェクトの成果物は無償だから、使用料がかかるのは困る。次に契約についてだが、対象が実装者と利用者の 2 つの場合がある。実装者である KAME プロジェクトに契約が求められる場合、KAME プロジェクトには契約を結ぶ枠組みがない。

また、利用者に契約が求められる場合、KAME プロジェクトでは面倒をみれないし、KAME プロジェクトの成果物に契約を結ぶといった制約が加わることは、我々の望むところではない。そもそも、誰に対して契約を求めているのか明確でない特許もあった。

  • Source Specific Multicast(SSM)
  • Modular Exponential(MODP)
  • Network Mobility(NEMO)
  • Internet Key Exchange version 2(IKEv2)
  • Intra-Site Automatic Tunnel Addressing Protocol(ISATAP)
  • Virtual Router Redundancy Protocol(VRRP)
  • SEcure Neighbor Discovery(SEND)
  • NAT Traversal(NAT-T)/UDP-ENCAP

このリストには載っていませんがTeredo*1にも同様の問題があって、そのためにKAMEでは(USAGIでも)Teredoが実装されていない、という噂を聞いたことがあります。IETFで公開されているTeredoのIPRを見る限りでは実装者に契約を求めているため、これが成果物をオープンソースとして公開するための障害になっているのかもしれません。

この問題さえなければ、Teredoは他社でももっと使われていておかしくない面白い技術なんですけどねえ……。

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ところでTeredoと言えば、最近NTTコミュニケーションズが発表したOCNの新サービス「OCN IPv6」って、やっぱりTeredoを使ってるんでしょうか?

「どこでもIPv6」サービスをNTTコムが12月に提供開始(@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/news/200511/22/ipv6.html

「OCN IPv6」は、ユーザー認証に基づく動的なIPv6 over IPv4トンネリングサービス。ユーザーには固定と非固定のIPv6アドレスブロック(ルーティング・プレフィックス)がそれぞれ/64のサイズで1つずつ提供され、家庭内LAN上のIPv6機器に外出先からアクセスする、あるいは一時的に2つの家庭内LANをつなげるなどの使い方ができる。利用しているネットワークのルータ設定を変更する必要はまったくない。

(中略)

OCN IPv6に採用されているトンネリング技術について、NTTコムは現在のところ詳細を明らかにしていない。しかしUDPを使ってIPv6パケットをカプセル化する標準ベースの技術であり、マイクロソフトの次期OS、Windows Vistaにも搭載されるものだという。

「UDPでIPv6をカプセル化」「標準ベースの技術」「Windows Vistaにも搭載」というあたりでTeredoしか無いと思うのですが、技術の詳細が公開されていないので確証は持てずにいます。記事によると、ルータメーカ向けには仕様を公開しているらしいので、これを一般にも公開してくれたら嬉しいんですけど……。

しかし、これがもし本当にTeredoだとしたら、NAT越えのためにIPv6(=Teredo)を使うという考え方のアプリ*2が普及するきっかけになるかもしれません。今後の展開が楽しみです。

*1 最新のInternet DraftはTeredo: Tunneling IPv6 over UDP through NATsにて参照できます。

*2 昔のTeredoまとめサイトで書いたかもしれませんが、threedegreesはそういう考え方のアプリでした。

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