2005/11/09
■[書評]なるほどナットク! P2Pがわかる本
最近すっかり更新が滞ってしまって本書の出版からだいぶ経ってしまったのですが……このサイトの読者的には面白い本だと思うので、簡単に書評を書いてみます。
この本は、P2P技術に関連する話題を一通り網羅した解説本です。主な話題は以下のようになってます。
- P2Pの基礎・用語解説
- P2Pのメリット
- Napsterから始まるP2Pの歴史
- P2Pアプリでよく使われる技術の紹介
- P2Pアプリの例
- P2P技術をビジネス分野へ適用する際の注意点
- P2Pフレームワーク紹介
著者の岩田さんは、以前はP2Pのグループウェアを開発・販売するアリエルネットワーク社に勤めていたのですが、現在はSkype Technologies社に移られて、日本におけるSkype社のCTO的な立場で活動されている方です。そんなP2Pの専門家が
本書は、これまで筆者が訪問活動や講演活動、あるいは雑誌執筆などで行ってきたP2P技術の説明をまとめたものです。「P2Pとは?」という問いに対して、この1冊でかなり技術的に深いところまで理解していただける、というレベルを目指しました。(「はじめに」より抜粋)
ということで、多様な話題が整理されて読みやすくなってます。
ただ、P2Pファイル交換ソフトについては、P2Pの歴史に関する部分でNapster、Gnutella、KaZaA(FastTrack)が紹介されている程度なので、そちらを期待する向きには物足りないかもしれません。まあ、その辺は本書の対象外ということで……。
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内容について簡単に触れると、この本には「P2P技術に興味のある初心者向け」の側面と「P2P技術に積極的に関わる人向け」の側面があります。
「P2P技術に興味のある初心者向け」の側面としては、前から後ろの章に向けて、用語の意味をはっきりさせながら、少し難しめの内容を着実に積み上げている印象を受けました。
例えば、p.14の「P2Pシステムの基本構成」では、P2Pネットワークで使われる接続を
- 基本ネットワーク
- ダイナミックP2Pアクセス
の2つに分類して、前者を「P2Pネットワークを維持するために常時張っている接続」、後者を「(Skypeにおける通話など)実際に必要なときのみ、当事者のノード同士で張られる接続」と定義しています。ここはP2Pという単語を使う際に誤解を招きやすいポイントなのですが、長年P2P技術に関わってきた著者だけに、そのあたりにはきちんと注意が払われていて誤解がないのではないかと。
また、「P2P技術に積極的に関わる人向け」の側面としては、ビジネス用アプリを開発する際の注意点や、P2Pアプリケーションを開発する際の注意点がまとめられています(前者はP2Pアプリに限らない話ですかね)。このあたりは、P2Pアプリケーションを作る際のチェックリストとして便利そうです……というか、読者にP2Pアプリを作らせようとしているとしか思えない内容です*1。初心者向けの本とは思えません。濃すぎ。
というわけで、これは毎日P2P todayをチェックしてしまったり、過去にうっかりP2P勉強会やらSkype Conferenceに参加してしまっているような人にはオススメの本です。
参考:ビジネスという現実に直面したP2P(第1回P2P勉強会での岩田氏の講演)
http://muziyoshiz.jp/20040911.html#p09
*1 これはSkype社の陰謀なんだよ!
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