2006/09/11
■[P2P]Winny事件報告会(東京)に参加してきました
LSE - NPO法人ソフトウェア技術者連盟 - Winny事件報告会(京都,東京)
http://lse.or.jp/?winny_report
9/10(日)に開催された、ソフトウェア技術者連盟(LSE)主催のWinny事件報告会に参加してきました。9/4に金子氏の裁判が結審したのをきっかけに、弁護側の立場からこれまでの経緯について振り返ろう……という会です。
実は、9/4にも(京都地裁のある)京都で同様のイベントが開催されていて、そちらはINTERNET Watch等で既に報道されています。
「警察に協力的すぎたのが問題だった」Winny裁判の結審で金子氏がコメント
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/09/05/13199.html
NPO法人ソフトウェア技術者連盟は4日、Winny作者の金子勇氏が著作権法違反の幇助の罪に問われている裁判が結審したことを受け、裁判が行なわれた京都で報告会を開催した。報告会には公判を終えたばかりの金子氏と弁護団が出席し、改めて事件についての意見を述べた。
ただ、裁判が一段落した現時点の雰囲気を知りたかった、というのと、前からLSEに入会しようと思ってたのに機会を逃し続けていた、というのがあって、今回は直接話を聞きに行ってみました。
プログラムはこんな感じ。司会は壇弁護士。
1. 挨拶 LSE理事 藤森智行 2. 金子勇 著作権違反幇助事件の概要と弁護活動について報告 Winny弁護団団長 桂充弘 3. LSEのご説明とこれまでの支援活動について LSE理事 佐野義彰 4. 支援者の方々へのお礼とご報告 Winny開発者 金子勇
参加者は20〜30名程度でした。あんまり人来ないですね……。
以前からLSEに協力している方に聞いてみたのですが、会員の数がそもそもまだ少ないそうです。LSEの前身であるFreeKaneko.comではたくさんの人が募金してくれたのですが、実際にこういうイベントの会場まで来て、LSEに入会してくれる人はあまり居ないんだとか。
以下は、各講演の内容に関するメモです。録音して再確認、とかは全くしてないので、あくまで僕の個人的な解釈としてお読み下さい。
1. 挨拶(LSE理事 藤森智行)
FreeKaneko.com(http://freekaneko.com/)に始まる、LSEの設立経緯に関する話 FreeKaneko.comは新井氏(LSE理事長)が開設、藤森氏がサポートする形でスタート 当初は2chのスレッドを監視したり、対策の検討をしたり その後、壇弁護士を知って、現在のような形へ LSEの今後の活動: プログラマの賃金の問題(大学では学生が安いバイト代でこき使われてる?) プログラマのクオリティオブライフ向上
2. 金子勇 著作権違反幇助事件の概要と弁護活動について報告(Winny弁護団団長 桂充弘)
前提 - 正犯と面識がないのに、幇助として逮捕されている - ソフトを配布する際に「悪用しろ」と言っているわけでもない → それで逮捕していいのか? 検察の問題点 (1) 悪用目的に作っているから、幇助だと主張している(? このへん、メモが適当) - どの機能があるから幇助なのか、特定していない - 悪用されたという結果だけで判断していいのか? - その判断基準を、警察、裁判所が決めていいのか? - 罪刑法定主義の原則に反している (2) 利用実態:専ら悪用されている(90%以上)と主張 - 法律用語で「専ら悪用」と言うときは「悪用しかできない」という 意味になるが、Winnyは本当にそうか? - 90%と言われても、ピュアP2Pネットワークでは正確な分母が分からないはず - クラスタも考慮していない - 警察の調査では、ファイルの名前だけで90%と判断している - ACCSの調査はアンケート調査 - 統計的に正しいという保証がない - 悪用についてのみ調査しており、有効利用については調べようとしていない (3) 捜査手法 - ソフトが悪用されているからというだけで、 金子氏は3年前に突然捜査を受けて、自白を強要され、ソースコードを押収された - SONYは、テープレコーダーのヒットがきっかけで 世界的な企業に成長したとも言われている - テープレコーダーは著作権侵害にも使える道具だが、 速記官などにも売り込んでいた - 金子氏に対して行われた捜査手法を企業に対して行ったら、独裁国家と変わりない - 価値ある技術を押収していいのか? - どういう技術なら押収していいのか、その基準は? - 技術の意義や将来性を判断、調査していない - 京都地裁では刑事部の裁判官が判断する。これで良いのか? - 警察が、思いつきだけで技術の善し悪しを判断していいのか? - 検察は「Winnyは無政府状態を引き起こした」と主張しているが、その基準は? - そのような基準を定める法律や、処罰規定は何もない 参考: Winny開発者に懲役1年求刑、京都地裁で論告求刑公判(INTERNET Watch) http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/07/03/12541.html 最後に - 警察に逮捕される前に、いまの弁護団の弁護士と知り合っていれば ここまでこじれることは無かった 技術者は、技術の発表前に弁護士と相談してほしい - 裁判官は世論の動向を気にする 多くの人が、おかしいとおもってこの裁判に注目することが重要
その後、壇弁護士が講演を補足
検察のストーリー - 金子氏はコンテンツビジネスを敵意を持っていた - 著作権侵害を蔓延させて、コンテンツホルダの意識を改革しよう - 著作権侵害の意図でWinny配布 - だから逮捕 警察も、Winnyの開発だけで犯罪になるとは考えていなかったから こういうストーリーを用意した 警察は著作権侵害の事がわかっていない また、著作物の定義を分かっていない警察が 「調査の結果、著作物が90%」と言っている(ウィルスも著作物扱い?) 検察はWinny 1とWinny 2を区別していない 2chの書き込みも、実物を見ると、検察のストーリーにある「意図」には 繋がらないと分かるはず → 悪用された技術の開発者は、幇助になるのか?
3. LSEのご説明とこれまでの支援活動について(LSE理事 佐野義彰)
今までは金子氏の支援が主な活動 今後は、会員の数を増やして活動拡大したい - 面白くて腕の良いプログラマの集まる場作り - 楽しい雰囲気でプログラムについて語れる場 - 各言語、技術のコミュニティは既にあるので、 プログラマのクオリティオブライフや倫理観について議論する場にしたい - 事件が発生したらLSEという場で弁護士と技術者が議論し、 技術者の意見を社会に提言したい
4. 支援者の方々へのお礼とご報告(Winny開発者 金子勇)
(※金子氏の主張は、上記のINTERNET Watch記事とほぼ同じ。以下は差分) (自分も国立大学の職員で)警察とは地方公務員同士だから それほど問題をこじらせはしないだろう、という気持ちもあった 情報漏洩問題について、警察には同情する 漏洩問題はどうにかしなければいけないと分かっている
壇弁護士によると、弁論要旨添付資料は後日公開する予定とのことです(一部の論文の著者などに、名前を出していいか確認中)。
以下、感想。
今回の報告会では、2番目に講演された桂弁護士の話が特に面白かったです。メモを見るとよく分かると思いますが、今回の裁判の理不尽さを力強く訴えておられて、今後も金子氏を強力に弁護してくれるのではないかと感じました(まぁ、ホントは今回で終わればいいんですけど)。
また、講演者の方が口々に参加者の少なさを嘆いていましたけど、これは技術者の意識がどうこうと言うより、単に宣伝がまずかっただけのような……。
あと、当初LSEが想定していた「金子氏に続くプログラマの逮捕」や「Winny関係者(紹介サイト運営者とか)の逮捕」が起こらなかったので、今後のLSEの方向性は多少揺れているみたいです。個人的には、今回会員になってはみたものの、金子氏をちゃんと弁護してもらえればあとは特に気にしませんけど。
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ちなみに、報告会のあとは、有志でルノワールに流れてお茶会が開かれました。下の写真は、ルノワールで撮影した寄付箱。寄付は相変わらず募集中だそうです。
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(2006/09/16追記)
トラックバックでご指摘があったので、佐野氏の肩書きから「事務局長」を外しました(ていうか、当日配布されたプログラムからして間違ってますよ)。
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