無印吉澤(※新エントリはhatenablogに掲載中)

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2009/01/04

[P2P]Winny裁判報告会に行ってきました

LSE - NPO法人ソフトウェア技術者連盟 - Winny裁判報告会開催のご案内(2009年1月)
http://lse.or.jp/?winny_report090104

今年の1月19日から大阪高裁での控訴審が始まるのを受けて、ソフトウェア技術者連盟(LSE)のWinny裁判報告会が開催されました。会場は、恵比寿駅近くにあるドリームボートの東京オフィス。結構立派なオフィスでした(写真の一枚も撮ってくれば良かった……)。

ちなみに参加者はたった7名でした。まあ、去年は(表向きには)大した動きもなかったので、無理もないかと。僕も、山根さんから教えてもらってなかったら多分気付かなかったと思います。

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■ 今後のLSEの活動について

まず最初にLSE理事長の新井さんから、挨拶と、今後の活動についての説明がありました。

今年は、日本のソフトウェア業界を盛り上げるための活動を考えているとのこと。最近、新井さんは福岡でRuby技術者向けの教育に力を入れており、その一環として、現地で講習会や九州Ruby会議01(2008年12月14日開催)を開催しているそうです。また、日本の最新状況を英語で伝えるAsiajinというサイトを2007年末に開始し、これは今ではTechCrunchの執筆陣からもチェックされるくらいに認知が高まってきているとのこと。これらの活動とLSEの活動をうまく合わせたい、と述べていました。

また、僕がちょっと前にツッコミを入れたLSE会員のスルーっぷりについては、近いうちに会員向けのメーリングリストを作って、イベント告知などを行うようにしてくれるそうです。会計報告についてもそのうち出すけど、弁護士費用はほとんど持ち出しで、まれに海外事例の翻訳を外部に依頼するくらいで実際ほとんど出費はない、とは壇弁護士の弁。

ML作成と同じタイミングで会費未払いの人には連絡を送るそうなので、僕の今年分の年会費も、そのときには耳を揃えて払おうと思います。いや、今日払っても良かったんですけど、財布に6千円しか入ってなかったので……すみません。orz

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■ 控訴に至る経緯

その後、壇弁護士から原審のおさらいと、大阪高裁への控訴に至った経緯についての報告がありました。

今回の報告で使われたプレゼン資料は、1月19日のマスコミ向け説明に向けて手直ししたあとで、いずれWebサイト上で公開する予定とのことです。なので、ここでは細かい内容は紹介しませんし、詳しくはプレゼン資料の公開後にそちらを見てもらいたいのですが、率直な感想としては「なんかややこしい話になってるのは分かった」。

弁護側の控訴理由として、壇弁護士からは以下の4点が紹介されました*1

  • 法令適用の誤り(刑訴法380条)

    • 不特定多数の幇助は成立しない
    • もし仮に不特定対数の幇助が成立するにしても、曖昧な用件で成立させてはならない

  • 訴訟手続きの違法(刑訴法379条)

    • 訴因特定不足
    • 告訴の不存在

      • 親告罪、特に著作権法においては、正犯に対する告訴をもって、幇助犯に対する告訴を認めることはできない

    • 証拠物(ACCSのアンケート)を供述証拠としてつかった違法
    • 証拠能力を欠く被告人調書の証拠採用

  • 事実誤認(刑訴法382条)

    • ファイル共有ソフト利用実態(実態に合致しない)
    • 被告人の主観的対応(Winny将来展望)
    • Winnyの技術(中継により匿名が実現するというのは誤り)
    • 正犯の認定(証拠から正犯性は認められない)

  • 法令の適用、または事実誤認

    • 新しい技術に対する曖昧な刑罰は許されるべきではない

今回聞いて驚いたのは、一審で有罪判決の決め手になったのは最終的にはACCSのアンケート(統計的には全く意味がないデータ)だった、という話と、映画ファイルのアップロードで逮捕された正犯の裁判もずさん極まりないものだった(自白は取れているらしいが冤罪では?)、という話でした。

その背景としては、裁判官や検察側にITに関する十分な知識が無いだけでなく、刑事事件の裁判官は刑事事件しか担当しないため、民事事件の裁判官以上にIT知識を得る機会がない(インターネットに対して拒否反応を示しがち)ということもあるそうで。詳細はよく分からないけどなんか悪そうだから適当なロジックを立てて有罪にする、なんてことを普通にやられたらたまらないなぁ……。

あと、Winny事件以降、京都府警ハイテク犯罪対策室からの立件が増えた*2、という話が出たのですが……最近はどうも、海賊版DVDの字幕作成者を(字幕を作成しただけで)著作権法違反幇助の容疑で特定しようとしているそうです。以前、字幕職人が公衆送信権侵害容疑で逮捕されたことはありましたが、字幕を作成しただけで著作権法違反幇助というのはちょっとやりすぎのような。そりゃまあ、字幕を作成するからには、それをどこかで公衆送信することを意図している、と言えないことは無いんでしょうけど。うーん、さすがに「著作権法違反幇助」を乱用しすぎのような。

壇弁護士によると、高裁の結果がどうなろうと(金子さんが死なない限り)絶対に最高裁まで争うとのことなので、著作権法の乱用を防ぐために今後も頑張って欲しいと思います。僕も引き続き応援します。

*1 ちなみに、検察側の控訴理由は量刑不当。

*2 原田ウィルス作者の逮捕、違法着うた配信幇助でのレンタルサーバ会社役員の逮捕(ITmedia)、公衆送信権侵害容疑での字幕職人の逮捕(P2Pとかその辺のお話@はてな)に関与。

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