無印吉澤(※新エントリはhatenablogに掲載中)

吉澤です。このサイトではIPv6やP2Pなどの通信技術から、SNSやナレッジマネジメントなどの理論まで、広い意味での「ネットワーク」に関する話題を扱っていたのですが、はてなブログに引っ越しました
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2004/12/15

[位置情報][P2P]位置情報サービスとP2Pの親和性について考える

今日の日記は、Tomo's HotLineのエントリ「位置情報とP2P」への反応です。

僕は分散ハッシュ(DHT)のことがあまりよく分かってないので、Tomo's HotLineは読んでてもあまり反応できないのですが、今回の内容はちょっと気になりました。このエントリでは、前半部分で「位置情報を共有するにはP2Pが望ましい」と結論づけて、後半ではDHTの話に移っているのですが……しかし、位置情報とP2P型の情報共有ってホントに親和性が高いんでしょうか?

結論から言うと、位置情報の流通にP2Pが適しているかどうかは、その位置情報を利用するサービス(以下、位置情報サービス)の種類によると思います。

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そこで、まずは位置情報を利用したサービス(以下、位置情報サービス)の分類について考えてみます。多少乱暴ですが、既存のものだけでなく将来的に考えられているものも含めて、位置情報サービスは大まかに分けると以下の2種類になります。

  1. 位置情報の通知
  2. 位置情報に基づく検索

前者は、移動端末を持つユーザが自発的に位置情報を通知するもの(例:auのGPS携帯から利用できるEZナビで「現在地メール」を送信)や、ユーザが遠隔地にある移動端末の位置情報を要求するもの(例:ココセコム)などです。他にも、最近各メーカが試験的に開発している、RFIDタグで取得した各ユーザの位置情報を表示するIM、といったものもこの分類に入ります。

後者は、移動端末を持つユーザが要求すると、位置情報に応じたコンテンツが配信されるサービス(例:「近くのお店検索」を実行できるEZweb版のぐるなび)や、移動端末を持つユーザが要求を出さなくても、位置情報に応じたコンテンツがプッシュ配信されるサービス(例:ボーダフォンのステーション)などです。

Tomoさんのエントリでも、GPSを利用した位置情報サービスを同じように分類されていて、以下の(1)と(2)が「位置情報の通知」、(3)が「位置情報に基づく検索」に対応しています。

1)位置情報を知人に伝える
2)位置情報を所属組織に伝える
3)位置情報を渡して、それを使ったアプリケーションの結果をもらう

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で、本題のP2Pの話に戻りますと……。

位置情報の通知、については(そのままですが)位置情報を相手に知らせることが目的なので、位置情報の提供者と受信者が、第三者を介さないP2Pの関係であっても良いと思います。位置情報の提供者が、相手によって通知する位置情報の精度を変えるのもありでしょう。

一方、位置情報に基づく検索、については少し話が違います。こちらのサービスは、

  • 位置情報の提供者(複数)
  • 位置情報を元にしたサービスの提供者(複数)

の二者から構成されるもので、サービスの提供者は「ユーザの位置情報が特定の条件を満たした時に、その条件に対応した行動(位置に応じたコンテンツ配信など)を行う」ことが目的です。つまり、実際のところ、サービス提供者は相手の位置を知る必要がありません。それにも関わらず、サービス提供者は位置情報を渡されてしまっているわけです。ここに、「位置情報の通知」の場合とは異なり、第三者が介入する余地があります。

そこで、上で示した位置情報に基づく検索の構成を以下のように変えてみます。

  • 位置情報の提供者(複数)
  • 「条件」と「行動」の組からなる「ルール」を提供する、サービスの提供者(複数)
  • 上記二者から受け取った位置情報とルールを比較する仲介者(1つ)

ぐるなびを例に取ると、位置情報の提供者は一般ユーザ、サービスの提供者は店舗情報を提供する広告主で、仲介者はぐるなびに相当します。まぁ、長々と書いてしまいましたけど、要するに、これは従来のサービスのモデルと同じものです。

しかし、このような構成にすることで、ユーザが提供する位置情報は仲介者にのみ渡され、サービス提供者の方まで位置情報が不必要に拡散することを防ぐ事ができます。位置情報の提供者とサービス提供者の間で位置情報をP2Pにやり取りするよりは、個人的にはこちらの方が「個人情報が漏洩する危険性が低い」と言えると思うのですが……皆さんはどう思われるでしょうか。是非感想をお聞かせください。

[位置情報]プライバシを考慮する分散型位置管理機構Tachyonの開発

http://www.ipa.go.jp/jinzai/esp/15mito/mdata/16-12.html

今回の日記を書くために調べものをしていて見つけた、平成15年度の未踏ソフトです。上記URLの採択案件評価書以外にも、Tachyonプロジェクトのウェブサイトにてプレゼン資料が公開されています。

このTachyonのメリットは、位置情報を管理するサーバが分散しているために、ある1つのサーバに蓄えられた位置情報を管理者が覗いてもユーザの行動を推測しづらい、という点にあるようです。上記の「位置情報の提供者/サービスの提供者/仲介者」モデルについても、仲介者の部分をこのように分散するなどして、悪意による情報漏洩の危険を低くするアプローチはあり得ると思います。

本日のTrackBacks(全3件) []
# ここギコ!:プライバシを考慮する分散型位置管理機構Tachyon (2004/12/16 14:12)

平成15年度未踏ソフトウェア採択・Tachyonプロジェクト 無印吉澤さん経由で発見。 位置情報といっても無線タグとかでの屋内位置管理みたいなアレです。 例えば研究室にいて、自席や図書室、実験室なんかにいる時はどこにいるか他人から判るようにして欲しいが、談話室や休..

# aks's weblog:位置情報サービスとP2P (2004/12/17 01:34)

位置情報サービスとP2Pの親和性について考える 今日はちょっと真面目に長目に。(いつも真面目ですが) そしてたまにはTBしてみたりします。 ● まず、 >位置情報サービスは大まかに分けると以下の2種類になります。 > 1. 位置情報の通知 > 2. 位置情報に基づく検索 ”..

# 俺シピ:車両間P2P (2005/05/28 15:21)

まえP2Pカーナビの話を書きました。

通信実験の実験レポートありました。

いいんじゃなーい?

私ならこうつくる。

・PCプラットフォーム
・x86CPU(Pentium,Celeron,Athron,Duron)
・WindowsOS
・携帯電話やGPSや車両センサーはUSBインターフェースでつなげる


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