2006/07/23
■[書評][ネット文化]インターネットの法と慣習
インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門(白田 秀彰)
インターネット文化/技術に造詣の深い法学者である、白田先生の新刊です。書き下ろしではなく、今年の3月までHotwired Japanで連載されていた「インターネットの法と慣習」というコラムを再編集した本とのこと*1。
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本書で書かれていることは、僕なりの理解でおおざっぱにまとめると、
「インターネットによって新たに出来るようになったことが、現実世界の法で阻害されつつある。このままでいいの?」
という危機感と、この現状をより良くするための著者による持論です。
正直、僕みたいな理系人間が法律に関する話を聞く機会となると、個別の事例に関する弁護士の見解(Winny裁判の壇弁護士とか)くらいしかなかったので、法学者による法の歴史を踏まえた意見は弁護士のそれとまた違う雰囲気があって面白かったです(まぁ、これは白田先生の特異なキャラクタから来てる面白さかもしれませんけど……)。
例えば本書では、知的財産権制度の話をするにしても、Winny裁判の話を直接的に持ち出したりはせずに、
知的財産権と土地所有権が似ているという話
→ 封建時代に土地所有権が成り立っていった歴史の話
→ 知的財産権を土地所有権に例えるとこうなる、という例え話
→ 知的財産権の問題点(知的財産を仲立ちとした支配)の指摘
という感じで、随所で過去の歴史を背景としており、そこが(ある種突拍子もない)著者の持論に説得力を持たせています。
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しかしこの本、文体が軽くて、内容も面白いのでサッと読めるんですが、その中で書かれている問題について考え出すと急に難しくなってきます。本書の扱っている問題は、結局のところその大半が社会に関する問題なので。
インターネット上の書評を見ていたら、本書を「ライト・アカデミズム」と評している人*2がいましたが、うまく言い得てるかも……。インターネットの未来について考えたい人には、個人的には「ウェブ進化論」よりずっとお薦めです。
*1 ちなみに、収録されてるのは全27回のうちの一部だけです。個人的には、現実2.0(Hotwired Japan連載の最終回)の熱い文章も載せてほしかったなぁ……。
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