2007/06/30
■[セキュリティ][P2P]Winny特別調査員2について書いた日記への補足コメント
Winny特別調査員2について書いた日記に、法律に詳しい匿名の方から補足コメントを頂きました。少し長めですが読みやすい文章なので、この問題に興味のある方は一通りご覧になってみてください。
匿名の方からの補足コメント(2007/06/17)
http://muziyoshiz.jp/20070620.html#c10
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僕は法律的な知識がほとんどないので、ところどころ調べながら補足コメントを読みました。
以下は、補足コメントを読みながら調べたURLのリストです。個別労働関係紛争判例集のサイトは何故かアクセス出来なかった(2007/06/30現在)ので、Googleキャッシュへのリンクも張っておきました。
憲法13条
- プライバシーの権利の基礎とされることが多い包括的条文
- 日本国憲法第13条(Wikipedia)
- 憲法13条とは(はてなダイアリー)
三菱樹脂事件
- 過去の学生運動への参加を理由に採用を取り消されたことに対する裁判。人権規定が、企業と労働者という私人相互間に適用されるかどうかが争われた
- 三菱樹脂事件(Wikipedia)
- 憲法と人権の話、応用編。([よくわかる政治]All About)
労働者のプライバシーが問題になった判例
その他
個人的には、補足コメントの中で紹介されていた(96)【労働者の人権・人格権】プライバシー(個別労働関係紛争判例集)(Googleキャッシュ)の中にあった、以下の文が気になりました(強調は吉澤)。
(1)プライバシー侵害が問題とされた裁判例
最高裁がモデル裁判例において「職場における人間関係形成の自由」や「プライバシー」に言及した意義は大きいとされるが、これ以前にも、使用者が組合活動に関する情報収集のため従業員控室に盗聴器を設置した事件で、使用者が従業員の控室に盗聴器を設置し会話を傍受することは原告らのプライバシーを侵害するものであるとして、労働者らに各5万円の慰謝料を認めた岡山電気軌道事件(岡山地判平3.12.17 労判606‐50) や、引越業務での客の所持品紛失に伴う従業員に対する身体検査がプライバシー等の侵害に当るとし、慰謝料30万円の支払を認めた日立物流事件(浦和地判平3.11.22 労判624‐78)などがある。
所持品紛失に伴う身体検査ということで電子情報に関する事例ではないですが、情報漏洩を防ぐためにWinny特別調査員2を強制する、というのはこの事例と近い構図になりそうです。日立物流事件の判例に関する詳しい説明は、以下のサイトにありました。
日立物流事件(浦和地裁平成3年11月22日判決)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/11/s1109-3c2.html#5
以下は、判決の要旨の一部。
右所持品検査が適法といえるためには、少なくともこれを許容する就業規則その他明示の根拠に基づいて行われることを要するほか、さらに、これを必要とする合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で、しかも制度として、職場従業員に対して画一的に実施されるものでなければならない。
Winny特別調査員2を社員に強制する場合、「情報漏洩を未然に防ぐ」などの合理的理由が認められたとしても、方法の妥当性と、制度の不備が問題になりそうです。このあたりは、匿名の方がコメントの最後に述べられていたこととも一致してますね。
ただ逆に考えると、方法がWinny特別調査員2よりも妥当なもので、就業規則や雇用契約で私用PCのスキャンが義務づけられていたら、類似のソフトを社員に強制しても問題ないということになるのでしょうか?
結局、過去の事例から見るに、Winny特別調査員2のようなソフトの強制に対して、労働法に基づいて労働者がプライバシーの権利を主張する余地はありそうです。しかし、どのような条件が揃えばプライバシーを侵害してでもソフトを強制する正当性が認められるか、というバランスについては……実際に判例が出ないと何とも言えなそうです。
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