2005/04/26
■[SBM][SNS]Rojo / ソーシャルブックマークとソーシャルネットワークの微妙な関係
(今回の日記は、cedさんとのMSNメッセンジャーでの会話を元にしています。)
■ Rojoはダメダメでした。でも、どこがダメ?
今までは誰かに招待してもらわないと使えなかったRSSリーダの「Rojo」が、ユーザ登録さえすれば誰でも使えるようになりました。
SNSとRSSリーダーを組み合わせた「Rojo」が公開ベータテスト
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2005/04/21/7377.html
で、以前から気になっていたので、僕も早速ユーザ登録して使ってみたのですけど……実際に触ってみると何だか微妙でした。かなり期待していただけに、正直ショックです。
まず単純に、単体のRSSリーダとしてダメです。具体的にダメな点を挙げると、動作が重くて(やや過剰なデザインのせい?)、インタフェイスが分かりづらくて、既読/未読の管理が出来ない*1などがあって、日常的に使うにはちょっと、という感じの出来になっています。
それと、Rojoはサイトの保存やタギングなどの機能や、Contactsに追加した友達の間でサイトを共有する機能を備えているのですが、これもいまいち微妙です。前者はソーシャルブックマークと呼ばれるサービスに、後者はソーシャルネットワークサービスに似ているのですが、どうもちぐはぐというか、それぞれ単体のサービスのような楽しさが感じられませんでした。
機能的には十分楽しそうなのに、なにか楽しめない。そんなRojoのダメな理由について、今回は考察してみました。
■ ソーシャルブックマークの本質
そもそも、ソーシャルブックマークとは何なのでしょう?
del.icio.usやはてなブックマーク*2のようなソーシャルブックマーク(以下、SBMと略)が登場する以前から、SBMに似たようなサービスとしては、MyClipなどのクリッピングサービスが存在していました。その両者の違いは、簡単に説明すると次のようになります。
- クリッピング:インターネットから有用なサイトを拾い上げ&分類&公開する
- ソーシャルブックマーク(SBM):クリッピング+ユーザ-サイト-タグ間リンクで広がりを与える
つまり、クリッピングはユーザが情報収集した結果のアウトプットでしかありませんが、SBMはそのアウトプットが更なる情報収集に適したネットワークの形成に繋がっていて、それがSBM独自の魅力に繋がっています。更に言うと、以下のようなことです。
従って、ネットワークから能動的に情報収集するにしても、インターネットよりもSBMのネットワーク上でリンクを辿っていった方が効率的ですし、ネットワークから受動的に情報収集するにしても、インターネット全体よりもSBMのネットワークを対象とした方が効率的になるわけです。それぞれのネットワークに対する受動的な情報収集の例を、それぞれ以下に挙げます。
- インターネット全体を対象:特定のキーワードにマッチするRSSフィードの受信(例:Google Alert、サーチエンジンの検索結果をRSS配信)
- SBMのネットワークを対象:特定のタグやユーザにマッチするRSSフィードの受信(例:del.icio.usのinbox機能、はてなブックマークのお気に入り機能)
こうしてみると、インターネットとSBMのネットワークで、情報のフィルタに使える軸が意味を持ったものに変わっているのが分かると思います。
■ Rojoとソーシャルブックマークの比較
一方、Rojoもユーザ-サイト-タグのリンクを備えていて、パッと見ではSBMと同様の機能を備えているように見えます。
ただ実際のところ、Rojoでは「誰が/何人がそのサイトをクリップしたか」という情報が隠蔽されているために、情報の分類に使われる軸が一般のSBMよりも少なくなっていて、それがRojoのネットワークを狭く感じさせる原因になっています*5。これは、Rojoはかなりソーシャルネットワークサービス(以下、SNSと略)を意識した作りになっているので、「ユーザの情報はその友達にしか見せない」というポリシを適用しているのでしょう。恐らく。
で、そのSNSの特性を使って、Rojoはサイト共有機能(Sharedの画面で表示される)というものを提供しているのですが、これは「自分から1ホップ以内の友人が共有したサイトを閲覧できる」というだけの機能で、本質的には友達同士でクリッピングを共有しているのとあまり変わりません。
要するに、RojoはSNS的な特性を取り入れるのに失敗して、SMBの良さを殺してしまっている。そんな気がします。
■ SBMのネットワークとSNSのネットワーク
で、ここまで考えて思ったのが、RojoはSNS的な特性の取り入れに失敗してますけど……SNS+SBMという発想自体はどうなんでしょう。SNSとSBMをうまく組み合わせると、どういうサービスが生まれるんでしょうか?
ここで、以前読んだ面白い本の知識をちょっと引っ張り出してみます。
ネットワーク分析の知見から優れた人間関係の作り方について論じた『人脈づくりの科学』(著:安田雪)では、情報交換のネットワークには分散的で多様性のあるネットワークが適しており、同質的な集団によるネットワークの中では閉鎖的な情報交換しか行えない、ということが述べられています。
これは単なる僕の推測で何のデータも無いのですが、ある程度親しい人同士の繋がりで作られるSNSのネットワークは同質的で集中的なネットワークであり、興味のあるサイトを介した弱い繋がりで作られるSBMのネットワークは分散的で多様的なネットワークと言えるのではないでしょうか?
そう考えると、SBMのネットワークが情報収集に適している(楽しい)のは頷ける話ですし、SBMのネットワーク形成にSNS的な特性を利用するのはどうも逆効果になりそうです。
ただ、「友達が注目するサイトは自分にとっても注目する価値がある」というRojoのアイディア自体はそれほど間違っているとも思えません。そこで、SBMのネットワーク形成にSNS的な要素を使うのではなく、SBMのネットワークに対して、mixiのような既に存在するSNSのネットワークを重ね合わせてみたらどうでしょうか。具体的な方法はいろいろあると思いますが、単純な例として思い浮かぶのは以下のような重ね合わせ方です。
- SBMのネットワーク上で、SNS内の友達がリンクしているサイトを優先表示する
このようにして優先表示されたサイトのリストは、結局、人間関係に基づいて作られた同質的なSNSのネットワークの特徴を反映したものになりそうです。ただ、そのようにリストを作る事で、「仲間内での話題についていくために見るべきサイト」の取りこぼしがなくなるという効果はあるので、今後、インターネット上の情報量がますます増えていくにつれて、このようなSBMとSNSの連携が重要になっていくことは十分考えられます。
ただ、そういうSBMとSNSの連携による面白さは、SBM自体の魅力には叶わないような気がします。個人的にはSBM、というかWWWのオーバレイネットワークを形成する技術の発展に、今後は期待したいところです。
*1 既読記事の一覧は「Saved」の画面で見る事ができるのですけど、RSSリーダとしてはむしろ既読のを消して未読サイトのみ強調してほしい……。
*2 タグを選ぶのがユーザかシステムかという問題は、今回の話には関係ないので省略(del.icio.usは前者で、はてなブックマークは後者)。
*3 現在の主なサービスでは、サイト間はユーザまたはタグを介してリンクされていると言えます。
*4 SBMもWWW上にあるので、オーバレイと言うのはちょっとおかしいですかね……。
*5 まぁ、インタフェイスが悪いのが一番の原因だとは思いますけどね。メインのRSSリーダ部分と、サイト-タグのネットワークが完全に分断されてしまっているので、これを改善するだけでだいぶ感じは変わりそうなんですけど……。
この日記に対する補足を、後日追加しました(セルフツッコミとも言う)。
はじめまして。ソーシャルブックマークサイト「フロッグ」運営担当のラムです。
本日、ソーシャルブックマークサイト「フロッグ」をオープンしました。「フロッグ」は、面白いサイトを投稿、評価、コメントできるブックマークサイトです。
あなたが気になるサイト、みん
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無印吉澤 - Rojo / ソーシャルブックマークとソーシャルネットワークの...
Pogolonの開発者TJです。 http://www.pogolon.com/ です。 Pogolonはブックマークサイトです。 一人二台が当たり前になりつつある今日、どこでも つかえるブックマークがPogolonの目指すところと なっています。 使いやすさ第一に作っていく予定です。 特徴としては・・・..
前にもリンクしたこの記事ですけど。はてな+mixiの議論とか盛り上がってるので感想を。 無印吉澤 - Rojo / ソーシャルブックマークとソーシャルネットワークの微妙な関係 最近、SBMをよく使うようになってよく思う。もうちょい、SBMの重み付けを工夫できる気がする。い..
Rojoのアカウントを作ったものの、RSSリーダとしては未読管理がないらしく残念...
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