2005/08/01
■[SBM]「良質なコミュニティ」によるソーシャルブックマークの狭さ
だいぶ前の話になるんですけど、徳力さんがFPNでこんな記事を書かれていました。
はてなブックマークがヤフーやGoogleと戦う日?(FPN)
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=628
通常の検索エンジンは、大量の情報の山の中から、いかに検索している人に役立つ情報を浮き立たせるかということに注力します。その代表がリンクの数を基にしたGoogleのPageRankの仕組みなわけですが。
ソーシャルブックマークは、すでに役に立つものだけが人力で集められたシンプルな人気ランキングの状態が出来上がってます。
どちらが効率が良いかというと、どうも後者の方が効率よい情報収集ができるような気がしてきます。(中略)
そう考えると、日本のソーシャルブックマークのデフォルトになりつつあるはてなブックマークが、将来GoogleやYahoo!などの検索エンジンと競合するのを想像しても、おかしくないような気がしてくるのは私だけでしょうか?
僕もこの頃、ソーシャルブックマークは検索エンジンと一体化するんじゃないか、とかなんとなく考えていたので、さすが筆が速いなあと思いながら読んだわけですが。ただ僕は、徳力さんの結論とは逆に、はてなブックマークはその性質上、YahooやGoogleとは同じ土俵には立ちようがない、と思っていたのでその部分だけが意外でした。
前回のSmall World話の続きがなんだかまとまらないので、今回はそのネタを引っ張り出して書いてみます。
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まず、ソーシャルブックマーク(以下、SBMと略)の特徴は、「Folksonomy(みんなで分類)」と「Search(検索)」の2つに大きく分けられると思っています。
「Folksonomy」は、基本的にはユーザがWebページなどのコンテンツを手作業で分類することによって、コンテンツに意味情報を付与するものです。特に、自分のための作業がみんなのためにもなる、という点が特徴として語られることが多いですが、ユーザはコンテンツを分類することで他のユーザとのすれ違い、または一体感のようなものを味わおうとしているようにも見えます。
つまり、コンテンツを登録するユーザにモチベーションを与えるのは、緩やかな繋がりによるコミュニティなのではないでしょうか。現在、国産のSBMでははてなブックマークが最も活発に見えますが、それは、「はてな」が既に十分な大きさを持った「良質のコミュニティ」を抱えているためです(と言っていいと思います。多分)。
一方、SBMにおける「Search」は、コンテンツに付与された意味情報(コンテンツを分類したユーザや、ユーザが付与したタグなど)や、コンテンツを分類したユーザの数など、SBMから得られる特有のデータを利用した検索です。既存のSBMでは、分類日時やユーザ数によるランキング、ユーザ名やタグをキーにした検索、簡単なキーワード検索機能などが提供されています。そういえば、はてなは割と早い段階から引用部分まで対象とした検索を提供してましたね。
ただ、今後SBMが拡張するにつれて、検索フォームを設置する場所があるかどうか、サーチエンジンを作る技術力があるかどうか……つまりサーチエンジンを持っているかどうかが重要になるでしょう。極端に言えば、del.icio.usにブックマークされているURLのみをクロールするGoogleがあれば、それだけでも十分使えるブログサーチエンジンになりそうだし、その検索結果を既存のGoogleの検索結果の横に表示するだけでも、サーチエンジンの利便性はかなり上がる可能性がある、という話です。
そう考えると、Yahooが早々にMy Web 2.0 BETAを開始したのも納得できます。
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さて。
こうすると、「Folksonomyに強いはてな」VS「Searchに強いYahooやGoogle」という構図に整理することも出来るとは思います。ただ、それでもはてながYahooやGoogleと戦いようがない、と僕が思うのは、はてなが売りにしている「良質なコミュニティ」そのものがSBMの利用者拡大を妨げるのが目に見えているからです。
現在のところSBM全般の傾向として、Folksonomy機能のユーザとSearch機能のユーザがほとんど一体である、と言えると思います(データは無いので、あくまでも印象程度)。Search機能だけを使うフリーライダーの人数もそれなりに多いとは思いますが……それは面倒くさがりかどうかという程度の違いで、ユーザのタイプとしてはフリーライダーもそうでない人も大差ないのではないでしょうか。よく言えばearly adopter、悪く言えばネット中毒気味な人だらけというか。人のこと言えませんけど。
しかし、SBMが今後拡大していくとすれば、それはSearch機能だけを使う「普通の」ユーザの増加ということになるはずです(キャズムを超えるとかなんとか)。そうなると、Folksonomy機能を利用するユーザのコミュニティが「濃い」コミュニティであるほど、Search機能を使う「普通の」ユーザにとってはSBMの価値が低くなってしまうのではないでしょうか?
はてなはearly adopterの集団である「良質のコミュニティ」を抱えていて、彼ら彼女らはFolksonomy機能のユーザであり、Search機能のユーザである、と。そのため、はてながはてなブックマークの規模を拡大しようとするなら、以下のどちらかの方法を取る必要がある、と僕は思います。
- はてな全体のサービス利用者に「普通の」ユーザをもっと増やす
- Folksonomy機能のコミュニティと、Search機能のコミュニティを分離する
ただ、これがどちらもはてなの方針と合わないような気がします……。前者は、はてなダイアリーに「普通の」ユーザを増やすということと直結すると思うのですが、その点では他のブログサービスの方が強い気がします。後者は、はてなの囲い込み戦略と合わないので多分あり得ないでしょうね。
ちなみに、以前ここのサイトでもSBMの検索にSNSのコミュニティを使うというアイディアについて話していましたが、その場合もFolksonomy機能のコミュニティと、Search機能のコミュニティが一体である必要は特にないように思えます。むしろ、両者はある程度(または完全に)分離すると考える方が自然でしょう。
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以上、なんだかこっちのネタもまとまらない感じですがどうでしょうか。
#ちなみに、この話題を思いついてから書くまでに1ヶ月近くかかったのは
#穏便なタイトルがなかなか思いつかなかったからだったり……。
はてなカテゴリ関係の内容に関係してある記事をピックアップ。 http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=628通常の検索エンジンは、大量の情報の山の中から、いかに検索している人に役立つ情報を浮き立たせるかということに注力します。その代..
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