2006/12/13
■[P2P]Winny開発者の金子氏有罪 → 控訴へ
「徹底抗戦する」――Winny開発者、控訴へ(ITmedia News)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0612/13/news061.html
Winny開発者の金子氏に、150万円の罰金刑。
有罪にされる可能性は高そうだと思っていたので、その意味では予想の範囲内だったのですが……。ただ、今回の判決の中で「金子氏は著作権侵害を蔓延させる目的でWinnyを開発した」という検察の主張が退けられたのは意外でした。
もっとも被告はウィニーの公開、提供を行う際に、ネット上における著作物のやりとりに関して、著作権侵害の状態をことさら生じさせることを企図していたわけではない。著作権制度が維持されるためにはネット上における新たなビジネスモデルを構築する必要性、可能性があることを技術者の立場として視野に入れながら、自己のプログラマーとしての新しい技術の開発という目的も持ちつつ、ウィニーの開発、公開を行っていたという側面もある。
(asahi.comの「ウィニー」裁判、判決要旨より引用)
というのも、これまでの裁判は、Winny開発が著作権侵害を意図したものかどうかが主な争点になっていたので、有罪になるとしたら当然この主張に則ったものになると思っていたからです。
これまで、検察側は「警察の取調べなどでも著作権侵害を意図していたと本人が供述している」と主張しており、その一方で弁護側は「京都府警の捜査員が『著作権侵害を蔓延させるためにWinnyを作りました』といった言葉の入った申述書の見本を作り、金子氏にそれを書き写させた」と主張してきました。
例えば、以下は結審の際に出たINTERNET Watchの記事です。前者が検察側、後者が弁護側の主張。
しかし、今回の判決を見る限り、2ちゃんねるでの「47氏」の発言や、警察の供述証書からは、金子氏が著作権侵害の意図を持っていたと立証することはできない、という判断になったようです。
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ただ、このように弁護側の主張を認める一方で、判決では、
- 金子氏は著作権者の有する利益を侵害するであろうことを認識していたにもかかわらず、Winnyの公開、提供を継続していた
- そのような弊害を十分知りつつも、Winnyによる新しいビジネスモデルが生まれることを期待して開発を続けたことは、独善的かつ無責任な態度で、非難は免れない
という趣旨のことを主張しており、この点で一応の罰が与えるべきと判断したようです。Winnyのようなソフトウェアを禁止する法律の無いところに、「著作権者が損害を被っている」という事実から逆算して罪状を決めた、ということでしょう。その結果、執行猶予などは付かずに150万円の罰金、という形になった、と。
どっちつかずの判決というか何というか、それなら無罪にしとけよと思うんですが……。
僕もWinnyが無害だと思っているわけではないので、今回の件を契機にして、今後同様のソフトウェアが現れることを考えて法整備をする、というような方向に進むのならまだ分かります。しかし、「結果的に悪用しかされなかったよね」という結果論に基づいてソフトウェア開発者だけに罰を与え、それ以外は放置したままという現状にはどうしても納得がいきません。
刑が軽いとはいえ、このような結果論から出た判決がまかり通るようでは、「善意で成り立つようなP2Pサービス」は日本では当分全く開発できない状況になるでしょう。リスクが高すぎて。この点で言えば、「開発者の故意」によって有罪判決が出た方が、まだ今後への影響が少なかったような気さえします。
「Winny裁判」で有罪判決、自由なソフト開発はもうできない?(@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/news/200612/13/winny.html
金子氏と弁護団は既に上告するつもりのようです。また長い戦いになることが予想されますが、がんばって欲しいと思います。
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参考リンク集(随時更新):
- [特集]ブロガーが見た Winny有罪報道(P2P today ダブルスラッシュ)
- [特集]ブロガーが見た Winny有罪報道(2)(P2P today ダブルスラッシュ)
- 12月13日 今日のTop「Winny開発者に罰金150万円の有罪判決」(P2P today ダブルスラッシュ)
- セキュリティホール memoのWinny判決関連リンク
過去のWinny関連日記:
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